2012年03月01日

鉄のこと4 鉄そのもの

Fe 私が鉄に興味をもった1990年代、鉄のモノ、アウテリア製品は少なかったように思います。
ここ数年、門扉やカーテンレールなどに鉄モノが多く使われ、ガーデニングには中国産のものを多く見受けます。
WOUGHT IRON(ロートアイアン)と言う言葉があります。
炭素分が0.02-0.08%でBLACK SMITHにとって伝統的な素材でもあり、現在大量に生産されていない希少価値の鉄です。鋼はマンガン リン イオウ シリコンなどをふくむ鉄の合金で炭素の量により性質が異なります。
マイルド ローカーボンスチール 0.2-0.25%  メヂアムカーボンスチール 0.25-0.45%  ハイカーボンスチール0.45-0.95%
私たちはやわらかいマイルドスチールを主に使います。
鉄の成分の炭素量が多いのを鋼(はがね)といい硬くて、切れますが、もろいため柔らかい材料で抱き合わせます。
片刃は片側のみに鋼を鍛接したものをいい、軟鉄にサンドウイッチされた鋼が両刃です。
古い鉄橋やいかり、和鉄など使われているロートアイアンは軟らかくてナイフメーカーに価値ある鉄です。
日本のは刃物鍛冶は切れ味を重んじていますが、西洋やアメリカでは異種の鋼材を積層鍛造して縞模様を表面に浮かび上がらせる
技法(MOKUME ダマスカス)が盛んに研究され、多くのナイフメーカーは技を競っています。

鉄のこと4 鉄そのもの


ロートアイアンは別の意味もあります。
棒状の鉄や鉄板を加熱し、曲げる、捻る、伸ばすなどして加工し、必要な小パーツを作成し、その後各パーツを溶接・研磨して完成する。
1点ものが多いために、オーダーメイドが基本であり、受注に際しては綿密な打ち合わせが必要である。

鉄のこと4 鉄そのもの


鉄の加工
鉄は温度により結晶組織が変化し性質も変わります。化学的な難しい結晶組織などは別にして刃物や工具を作るうえでの最低限の知識として知る必要があると思います。

焼き入れ(クインチング)
鋼をオーステナイト組織の状態(磁気を帯びない非磁気化750度-800度)に加熱した後、水中または油中で急冷することによって、
マルテンサイト組織の状態に変化させる熱処理である。冷媒により、水焼入れや油焼入れの呼称がある。
フォージの上に磁石をぶら下げ温度に達したと思ったときに磁気があるかどうかを確かめます。
鍛冶屋では長年の感、鉄の色で温度を判断します。カラーチャートなるものがありますがとても難しいです。

鉄のこと4 鉄そのもの




焼きなまし(テンパリング)
焼入れによって硬化した鋼に靭性を与える目的で行われる熱処理で、マルテンサイト組織の状態から鋼を再加熱し、一定時間保持した後に徐冷する作業をいう。
再加熱後、保持する温度により組織の変化が異なり、600度程度で焼き戻すと、靱性に優れるが、腐食されやすいというソルバイト組織が、
400度程度で焼き戻すと腐食されにくいトルースタイト組織が得られる。オーブンを使用すると温度管理が楽ですが、プロとはいえませんね。
人吉の刃物鍛冶は焼いた金属の上に水を落とし、出来る水滴の大きさで温度を判断していました。それぞれ経験を元にした技です。
焼きなまし(アニーリング)
「焼鈍(ショウドン)」ともいう。再結晶温度に加熱、保持の後、普通炉冷によりゆっくり冷ます。残留応力の除去、材料の軟化、切削性の向上、冷間加工性の改善、
結晶組織の調整などを目的とする。また鋼種、目的により加熱温度と徐冷の方法が変わってくる。
鉄以外 銀、銅などの金属を焼き放置すると軟らかくなります。展性が増し細工が可能になりますが、鉄の場合は異なります。昔から「鉄は熱いうちに叩け」と
いわれている様に色が赤い時意外は展性が無く、加工が困難です。




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Posted by ミツ at 12:05│Comments(0)
 
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